心を軽くする方法~認知行動療法のblog

心理学で心を軽くする方法。心理学で心をひも解き、相手も自分も理解しあう事が出来る。【心理研究家】佐屋鉄心

認知行動療法

【認知の歪み】極端な一般化

極端な一般化

認知の歪みに「極端な一般化」というものがあります。
一般化とは、
AはZ
BはZ
よってCもZ
というような、一連の性質をまとめ、一つの概念とすることです。
これが極端になっている場合に、認知の歪みとして問題となることがあります。
例えば、甘い誘いをしてくる人に対して一度騙されたことがあると、次に甘い誘いをしてくる人も騙す人だと決め付けるような場合です。
また、自分に対しても、「失敗をしたから次も失敗する」と考えるような場合も極端な一般化となります。
一連の性質を判断するのが早く、概念が適正ではないとも言えます。

この一般化は、思考を助けるために元々は脳が持っている学習機能です。
例えば、怒っている顔の人を見たら目をそらすような事はないでしょうか。
これは、怒っている顔の人=自分に危害がある、という一般化を行っているためです。
これは、危機回避や判断を早める効果があります。
上手く使えば生きるのに役立つということです。
ですが、これが極端になってしまうと問題が生まれます。
怒っている顔の人を一生避け続けていては、本当は厳つい顔なだけでとても優しい人との出会いを失っているかもしれません。
その逆も然りです。


また、極端な一般化は、時として差別を引き起こしてしまう事もあります。
ある程度のカテゴリーで分類し、その人達を批判するようなケースも極端な一般化を行っていることが原因です。
カテゴリーの中でも、一人一人違いがあります。
嫌いなカテゴリーの中に好きになれるものがあるかもしれません。
簡単に一般化をすること自体が難しいことなんです。

極端な一般化をしてしまいがちな人は、その根拠と現象の関連性を突き詰めて考えることが大切です。
事柄をバラバラにしてみると違ったものが見えてくるはずです。
また、法則性を分析する事も大切です。
失敗した時の法則をそのまま使っていては、また同じ結果になる可能性が高いでしょう。
ですが、法則を変えて実行することによって、結果が変わる可能性が上がっていきます。
一般化をするまでに努力をするということが大切だと思います。

【認知の歪み】恣意的推論

恣意的推論

認知の歪みの種類で恣意的(シイテキ)推論というものが有ります。
恣意とは
自分勝手な、思いつくままの考え。
引用:weblio
の事です。
充分な証拠や理論もなく、思いついたことで想像する認知です。
例えば、サスペンス映画を見ていたとしましょう。
序盤で怪しい素振りを見せた人がいたら、皆さんはどう考えるでしょうか。
恣意的推論の場合、「この素振りは犯人に違いない!」と考え、映画が終わるまでその人が犯人だという証拠を探そうとします。
ですが、序盤に怪しい素振りをしただけの人を犯人と決め付けてしまうのは、証拠不十分ですね。
サスペンス映画の場合は、最後にどんでん返しという具合に問題にはなりませんが、恣意的推論が日常的に出てくる場合は要注意です。
問題は恣意的推論に基いた予測を現実に起こると信じて感情がマイナスになる点です。
例えば、現実に起こりえそうな事象として、上司が挨拶に返事をしてくれなかったとしましょう。
恣意的推論だと
「私は視界に入らない程度の人間なんだ」
「私は嫌われたんだ」
などの推論を現実と思い込んでしまいます。
挨拶に返事をしないという事実が証拠ではありますが、即『嫌われた』『自己否定』となってしまうのは時期尚早です。
上司は大変な悩みを抱えて周りが見えなくなっていただけかもしれません。
上司からすると声が聞こえなかっただけかもしれません。
推論というのはあくまで可能性を考えることです。
100%の答えを出すためにはこの状況では難しいという考えをすることが大事です。
また、推測に捉われてしまうという事も問題です。
不安に思い、想定や準備をする事は良い事ですが、不安に飲み込まれて感情がマイナスになっている場合は発想を変える必要があるでしょう。

恣意的推論をしないようにするには、状況を冷静に観察し、事実に基いた推論をいくつもするということが大切です。
なんか名探偵のようですね。

反証

反証

認知行動療法では自動思考の根拠に対して「反証」という作業を行います。
これは、その時見えているもの意外のものを見えるようにする作業で、とても大事な作業です。
簡単に例を挙げてみて見ましょう。

エピソード
→町で知らない人に声をかけられた

感情
→びっくり、不安

自動思考
→危害を加えられるかも
 なにを言われるかわからない、自分で対応できないかも

自動思考の根拠
→知らない人に声をかけられてもついていってはいけない
 何か聞かれても上手く返せたためしが無い

このようなエピソードがあったとしましょう。
認知行動療法では、これに加え身体症状やその時の行動も上げていきますがここでは割愛します。
今日注目するのは「自動思考の根拠」の部分です。
これは、先入観とも言うべきものですが、これを決定づけられない証明をしていきます。
それが反証です。
ここでのポイントですが、自動思考の根拠を「否定」する訳ではないということです。
自動思考の根拠が証明出来ないことを証明するというのが反証です。
ちょっとややっこしいですが、裁判でいうとアリバイを崩すような事と考えてください。
ここでは、
「知らない人に声をかけられてもついていってはいけない」

「知らない人についていってはいけないと教えられたが、子供の頃の話で声をかけてくる人がみんな悪い人だとは限らない」


「なにを言われるかわからない、自分で対応できないかも」

「道を聞きたいだけかも知れない。自分が知っていることを聞かれるだけかも知れない」


というのが反証です。
自動思考の根拠が絶対に正しいとはいえないということを言っています。
これがもし否定をすると
「知らない人に声をかけられてもついていってはいけない」

「知らない人に声をかけられてもついていっていい」

「なにを言われるかわからない、自分で対応できないかも」

「何を言われても自分なら答えられる」
という具合によくわからないことになってしまいます。
このケースだと否定しているのが分かりやすいですが、認知行動療法をやっていると否定で終わらせようとする方が多くいらっしゃいます。
否定は何の解決にもなりません。
否定自体が歪んだスキーマであるからです。
反証とは、『絶対に正しいという証明を覆す証明』だという事を考えながら行うことが大切です。

自分の感情を把握する事の難しさ

認知行動療法を行うときには、自分の感情を把握する必要があります。
これが意外と難しいことで、なかなか自分で具現化できない事も多くあります。
出来事に対して自分の気持ちから出てきたものが「感情」ではなく「思考」になっている人が見受けられます。
例えば、「上司に怒られた」という時に、「上司が間違っている」「私は悪くない」と思うことが感情だと思っているケースがあります。
これは感情ではなく思考結果です。
上司に怒られた→上司が間違っている
ではなく
上司に怒られた→感情→上司が間違っている
となります。
認知行動療法で行う作業の中で、出来事に対して分析を行う方法があるのですが、この感情の部分がなかなか出てこないという方は多くいらっしゃいます。
これは、反射的に思考している方に多く、言葉にすることが難しいということもあります。
このために感情を日々書き出すという作業を前段階に行うのですが、そのような方は難しいと感じて止めてしまう事が多いのは否めないことなのかもしれません。
ですが、自分の感情を把握して、自動思考と感情の元になっている自認知の歪みを修正するには最初の感情を把握する事は必須です。
日々、自分が感じている感情を考えるクセをつけると、自分の中で起こっているプロセスをひも解くことが出来るようになっていきます。
まずは、頭の中でも良いので『今の自分はどんな感情なのだろう?』と問いかけるクセをつけることが大切です。

自動思考とスキーマの修正

自動思考とスキーマの修正

認知行動療法では、自動思考とスキーマの修正も行います。
自動思考とは、「物事に対して感じた瞬間的なイメージ」です。また、スキーマは「自動思考を決定付ける自己のルール」のことです。
自動思考はスキーマが元になっていて相互で情報を交換しているともいえます。
認知行動療法は段階的に自身の変化を促して行きます。
スキーマを修正すれば自動思考が修正されるのでは?と思われるかもしれませんが、根本にあるスキーマは簡単には変える事が出来ず、むしろ変える事による弊害が起こる場合もあるので、表層に近い部分から修正を行っていきます。

では、自動思考とスキーマの修正に関して書いていきたいと思います。
まずは自動思考の修正から。
自動思考は無意識的に現れます。クセとも言っていいと思います。
例えば、仕事を失敗して上司に怒られているシチュエーションで『自分は悪くない指示が悪いんだ』と瞬間的にイメージしたとしましょう。ちなみに感情は怒りなどになると思います。
では自動思考が怒りを生んでいるのですから、怒りを覚えないための自動思考はどのようなものが必要でしょうか。
この場合だと、指示が本当に悪かったのかを検証してみましょう。
いつも通りの指示でいつも通りの結果だったのでしょうか?
又は、いつもとは違っていたのでしょうか?
様々な観点で考えて行きます。
そうして指示が本当に悪かったのかどうかを考えたら、次は自分が悪かったのかを考えます。
いつもと違う事をしていないか?
指示を勘違いしていなかったか?
考えた結果、自分が悪くなく指示が悪かったと最初に思った通りの事実であれば、本来怒られなくていいことで怒られているのですから、相手に事実を伝えることがスマートな方法です。
怒りを覚えるまでも無く、事実に則った結果にすることが出来ます。(自分が正しいのに言えないというケースもありますが、また別の自動思考になってしまうのでここでは割愛します。)
又は、最初の自動思考とは事実が違った場合(自分が勘違いをしていた。指示はあっていたなど)は事実と自動思考が違っていたのですから、自動思考を変えるのが得策です。
では、自動思考を変えるには何故その自動思考が出たのかを考える事が必要です。
『自分は悪くない指示が悪いんだ』と思ったのは、他者を否定する事による自己正当化をしようとしているからです。
自己防衛でもあります。
自分が間違っていると認めると、自分はダメな人間だと思ってしまいマイナスな感情になるのを回避するための自動思考だと考えられます。
この場合は、事実を認め自分の非を反省する事で自動思考への対処となります。
相手のせいにするのではなく、また自己否定ではなく自己改善をするという自動思考をもてるように意識する事が自動思考の変化となります。
ここまで考えるようになると、その時の感情はマイナスになるかもしれませんが、後からその感情が間違っていると気が付くと、気持ちも楽になります。
自動思考の変化を意識するとマイナスな感情を薄める事が出来るのです。

次にスキーマに関しても考えてみましょう。
上記の場合、『自分は悪くない、指示が悪いんだ』と思った原因のスキーマはどのようなものが考えられるでしょうか。
他者を否定する事による自己正当化だったとすると、その裏には『自分は正しくなければならない』という思いがあります。
これがスキーマです。
『自分は正しくなければならない』ということでメリットやデメリットが発生します。
メリットは正しい行いをしようと誠実な言動を心がけるところでしょうか。
悪い部分は上記のように他人のせいなどにしてしまうことでしょうか。
それぞれ良いところ悪いところがあります。
では、このスキーマを問題のない状態にするにはなにを変える事が必要でしょうか。
『自分は正しくなければならない』を逆にして『自分は間違っている』にしてしまうとまた違う問題が発生します。
このようなスキーマの修正は好ましくありません。
良い方法の一例としては、『自分は正しくなければならない。でも人にとって正しいかどうかはそれぞれ』というように、スキーマにプラスしてみる事もいいと思います。

このように自動思考もスキーマも入れ替えるのではなく、修正を行うことが大切です。





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プロフィール

佐屋鉄心

心理カウンセラーの佐屋鉄心です。
普段は某カウンセリングルームで認知行動療法の心理カウンセラーをしております。
様々な悩み解決のヒントとなれるような執筆活動をしています。