現在で言う認知行動療法とは、アーロン・T・ベックのうつ病に対する認知療法が基となり、「認知の傾向・思考パターンの内容」によって「感情・気分・行動」が決定されるもので、その認知を掘り下げていく事によって問題の解決を促すというものです。
日本では、認知療法と同意で扱われる事が多く、今も様々な心理療法を取り入れながら進歩しています。
認知行動療法は様々な精神疾患に有効とされ、うつ病、パニック障害、摂食障害、不安障害など幅広く使用されています。
尚、医療機関以外にも民間団体や大学で研究・実施されています。

認知とは、簡単に言うと物事の捉え方です。
例えば、誰かと話しをしているときに自分の考えとは違う考えが出てきたときに、「そのような考え方もあるんだ」と共感するか、「その考えは間違っている」という否定をするかは人それぞれです。
そこにいたる最初の感じ方は認知というフィルターを介して感じているものです。
否定をするときには認知の歪みがあり、その歪みが結果的に会話を上手く行かなくさせる原因になる可能性を秘めています。
認知行動療法では、「その考えは間違っている」ではなく、「そのような考え方もあるんだ」という柔軟な認知ができるように、物事の捉え方やその原因を掘り下げて改善していきます。


■認知の歪みの例

○全か無か思考
物事を極端に白か黒かに分けて考えようとする。
例:一連の仕事で一つのミスがあると、その仕事自体が完全な失敗だと思う。


○一般化のしすぎ
一つの悪い出来事があると、それが何度も繰り返し起こるように感じてしまう。
例:仕事の企画をしたが却下されてしまい「次もどうせ却下されるんだ」と考える。


○心のフィルター
わずかに良くない出来事ばかりを考えてしまい、その他の良い出来事は無視してしまう。
例:会社である企画を提案し、多くの評価は大変良いのにある人から受けた些細な批評が頭から離れず悩む。


○マイナス化思考
良い出来事を無視、あるいは悪い出来事にすり替えてしまう。
例 :自分は能力がないと考えている人が、仕事がうまくいっても「これはまぐれだ」と考える(このような考え方をする人は、仕事がうまくいかないときは、「やっぱり、自分はダメなんだ」と考える)。


○結論の飛躍
1.心の読みすぎ、相手の感情を早合点し思い込んでしまう。ネガティブな先読みと決め付け。
例 :「この病気は決してなおらない」と考える。


○拡大解釈と過小評価
自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。
逆に他人の成功を過大評価し、他人の欠点は見逃す。
例 :些細なミスをおかして、「なんてことだ。これですべて台無しだ」と考える。


○感情的決め付け
『こう感じるんだから、それは本当のことだ』というように、自分の感情を、真実を証明する証拠のように考えてしまうこと。
例 :「不安を感じている。だから失敗するに違いない。」


○すべき思考
『すべき』『すべきでない』と考えてしまうこと。
例 :会社のルールがこうなのだからそうするべきだ。


○レッテル貼り
一つの事柄での判断を、他のときでもその判断しかしない
例 :片付けをできない私は他のことでも失敗する

○個人化
良くない出来事を、自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう。
例 :部下が成長しないのは、自分ができないからだ



■スキーマ
→個人がそれぞれ持っている基本的な人生観や価値観であり、普段は無意識的な自分のルールとして様々な判断に用いられる。
本人はスキーマに気付きにくく、自分の感情の苦しみや、日々の苦悩の原因がスキーマをかえる事によって改善するということにはほとんど行き着けません。
あまりにも日常的にスキーマを利用した判断をしてきているからです。
また、スキーマの変容を周囲が促してもなかなか変わる事もできません。
スキーマはその人が生きてきた中で大切なもので、変えるという事は自己の否定にもなるからです。

本人が自分のスキーマに気付き、それを変容させようと思うまでの道筋を認知行動療法は行います。





認知行動療法は、まず自分の悩みに対する具体的な事象を挙げ、それを深く掘り下げます。
カウンセラーはこの堀さげをしやすくするためのサポートをします。
例えば質問の方法を工夫することで自分で発見できるようなプロセスにしたり、違う見方が無いか一緒に考えるという作業になります。
カウンセラーから掘り下げる事は、クライエントのためにはならないからです。
なので、認知行動療法はクライエントの力も必要になります。
悩みを深く掘り下げていく時には精神的負担も発生するので、注意が必要です。

認知行動療法とは、クライエントが自分自身で問題を解決していけるトレーニングともいえます。