心を軽くする方法~認知行動療法のblog

心理学で心を軽くする方法。心理学で心をひも解き、相手も自分も理解しあう事が出来る。【心理研究家】佐屋鉄心

2015年08月

客観的かつ理論的に考える

タイトルに「客観的かつ理論的に考える」と書きましたが、これはネガティブ思考の方には難しいと感じる方が多いかと思います。

なぜなら、ネガティブ思考になっていくプロセスの間には、主観的になってしまう傾向や非理論的な想像があるからです。

そしてそれは、クセのようなものでなかなか変える事が難しいことだからです。


では、順を追って客観的かつ理論的に考えられるようになるステップを紹介します。

まずは、客観的に考えるクセをつける方法です。

客観的というと、相手からどう見えているかをはっきりと理解するというイメージがあるかもしれませんが、実は違います。

「あの人はこう感じているに違いない。私はどうすればいいんだ。」というようなケースは、相手からの見え方を考えてはいますが、客観視をしているとはいえません。

相手からどう見えているかは誰にもわかりません。

相手の心を読み取る超能力でもあれば可能ですが、そうも行きません。

なので、まず前提として大切なのが、「はっきりと相手からどう見えているかはわからないこと」という事を念頭に置く事です。

そして、まずは考えられる可能性を洗い出すことをします。

実は、これが客観視なんです。

相手の心を「ああかな?こうかな?」と考える事で、それに伴なう結果も想像できます。

沢山の可能性が出てきますが、できるだけ多くの考え方をすることがいいでしょう。

更に大切なのが、洗い出した事を断定しないということです。

全て「かもしれない」で終わらせることが自分にとっても良い方法です。

なぜなら「はっきりと相手からどう見えているかはわからないこと」だからです。

答えを無理に出そうとしたり、思い込みで決め付けてしまうと自分が苦しくなってしまいます。

ネガティブ思考の方は、 この断定をしてしまいがちです。

原因は、様々な角度から考えられなかったり 、かもしれないで終わらせることに不安があるからです。

本来、相手の見え方は「かもしれない」で終わらせるものです。

もし断定をしたいのであれば、相手に聞いてみるしかありません。

それができない場合は、その見え方は確定ではないのです。

客観視 = 様々なケースを考える事


次は、理論的な考えをする方法です。

実は、客観視ができると理論的な考え方をする第一歩はもうすでに踏んでいます。

理論的に考えるためには材料が必要です。

例えば、先ほどのように「あの人はこう感じているに違いない。私はどうすればいいんだ。」というようなケースですと、理論的に考える材料が少ない状況です。

もう、自分の行動によって結果が出てしまうという状況になってしまっています。

ですが、相手からの見え方が確定していないのですから、そもそも行動を考えるのは早とちりです。

相手からどのように見えているかを色々なケースで考えると、そこから可能性の高い選択をしていくことが可能になります。

これが理論的な考え方です。

「あの人はこう思っているかもしれない?やっぱりこっちかもしれない?では、どちらに対しても対応できるような行動をしよう」

というような考えができるようになります。

客観的かつ理論的に考えるためには、自分のルールで決め付けず、「かもしれない」で終わることが大切です。

中途半端な感じがして不安かもしれませんが、最初の前提の「相手からどう見えているかは誰もわからない」ということを考えれば、中途半端な状態にとどめる事が本来の事実ではないでしょうか。
 

スキーマ

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認知行動療法におけるスキーマとは、「その人の中核となる考え方」です。

一般的なスキーマとは、「枠組み、一連の法則や決まり」という意味です。


スキーマというものは、普段意識することが無く思考の発端を担っています。

例えば、友人と待ち合わせをして待たされたとしましょう。

その時、相手にイライラして怒りの感情を持ったとしましょう。

その時のスキーマは、「約束は守るべき」という自分のルールにあたります。

自分は時間通りに着いたのに、相手はそれをしない事に対して不満を覚えるのです。

このスキーマは、資質や成長の環境によって刷り込まれてきたものです。

イライラという感情が出てくるまでに、スキーマを介し思考していることがお分かりでしょうか。

ですが、普段は感情までの道のりを意識する事は無く、感情だけが目立って認識されています。

そして、大抵の人はその感情だけを何とかしようと考えます。

我慢したり、相手にぶつけたりという行動がそれにあたります。

感情だけに対処をしてもストレスが溜まる事の方が多く、改善策とはいえません。

認知行動療法ではこのスキーマに働きかけをして、その後に起こる感情を変えるというアプローチをします。

そして、大切なのが「スキーマ事態は良い面と悪い面を持ってる」という事をまず最初に知っておくことです。

これは、スキーマを掘り下げていく時に自分を傷つけないようにするルールでもあります。



スキーマに関して、ジェフリー・E・ヤング等が5つのスキーマ領域からなる18つのスキーマを提唱しています。

■スキーマ領域:断絶と拒絶

1・見捨てられ/不安定スキーマ
自分は見捨てられるという思い込み

2・不信/虐待スキーマ
苛められる、拒絶されるという思い込み

3・情緒的剥奪スキーマ
愛情、共感、保護が与えてもらえないという思い込み

4・欠陥/恥スキーマ
自分は生まれつき欠陥人間だという思い込み

5・社会的孤立/疎外スキーマ
仲間はずれで孤独だという思い込み


■スキーマ領域:自立性と行動の損傷

6・依存/無能スキーマ
自分の力では何も出来ないという思い込み

7・損害や疾病に対する脆弱性スキーマ
病気、ダメージ、事故に対して無力だという思い込み

8・巻き込まれ/未発達な自己スキーマ
常に従い期待に応えなければならないなどの思い込み

9・ 失敗スキーマ
常に失敗するという思い込み

■スキーマ領域:制約の欠如

10・権利要求/尊大スキーマ
何でも欲しいがままになるという思い込み

11・自制と自立の欠如スキーマ
自制、忍耐、責任を負うことが無理だという思い込み


■スキーマ領域:他者への追従

12・服従スキーマ
服従しなければならないという思い込み

13・自己犠牲スキーマ
犠牲にならなければならないという思い込み

14・評価と承認の希求スキーマ
常に評価や承認を求めなければならないという思い込み


■スキーマ領域:過剰警戒と抑制

15・否定/悲観スキーマ
常に悲観的な予測通りになるという思い込み

16・感情抑制スキーマ
感情を持ったり表現してはいけないという思い込み

17・厳密な基準/過度の批判スキーマ
常に完璧でなければならないという思い込み

18・罰スキーマ
罰を受けるという思い込み


このように、様々なスキーマがあり、悩みを持っている方はその傾向が強い場合がほとんどです。

認知行動療法では、自分のスキーマを知り、それに対処する事を行っていきます。 

認知の歪みとは

認知行動療法では認知の歪みにクローズアップした療法を行います。

ここで、認知の歪みに関して解説します。

デビッド・D・バーンズは10の認知の歪みを提唱しています。
  1. 全か無かの思考 
  2. ~すべき思考 
  3. 行き過ぎた一般化 
  4. 心のフィルター 
  5. マイナス思考 
  6. 論理の飛躍 
  7. 拡大解釈、過小解釈 
  8. 感情の理由づけ 
  9. レッテル貼り 
  10. 誤った自己責任化(個人化)

皆さんは自分で当てはまるものがあるでしょうか?もしあれば認知の歪みを抱えていると言う事になります。

まず、最初に言っておきたいのが、認知の歪みが悪いものではないということです。

歪みといってしまうと、言葉の印象で悪いもののように聞こえてしまいますが、そうではありません。

認知の歪みが自分や周りの人間に悪い結果を起こしているときに問題の原因とされるだけです。


認知の歪みとは、 例えば、今「歪み」と聞いて悪いものだと感じたでしょうか?

歪み=悪いと感じた人は認知の歪みを持っているといえます。

今までの経験で、歪みというものが悪いもののカテゴリーに入ると判断して、認知の歪み=悪いもの、という判断を一瞬でしています。

例えば「あなたは認知の歪みがあります!」といわれたときに、「歪み」を悪いものだと解釈している人は、気分が落ち込むでしょう。

歪みという言葉に悪い印象を持っていない人は、認知の歪みとはなんだろうという疑問だけになるでしょう。

これが、人それぞれ持っている認知の歪みで、経験によって身に着いた判断の基準ともいえます。

これが、極端にマイナスに働いたときには問題の原因になります。


認知行動療法では、まず自分の認知の歪みに気付くことから始めます。

これは、自分の感情が出てくるときに頭の中で行われる判断のクセを知ることでもあります。

判断のクセは無意識で行われているために普段は考えていません。これを修正するにはひも解く作業が必要なんです。


また、認知の歪みを知る方法としては、感情からさかのぼって考えるという作業を行います。

「あなたは認知の歪みがあります!」
 ↓
 落ち込む(感情)

となったときに、なぜその感情が出てきたのかをひも解いていきます。

なぜ、落ち込んだかというと、歪み=悪いという考えを持っているので、「自分の考え方は間違っている」といわれているような気がしているからです。

では、落ち込んでいる原因は、歪み=悪いという認知の歪みがあるからです。

そこで、歪み=悪いを修正していきます。

確かに歪みという言葉は悪い事を表現する事に多く使われます。

ですが、表現対象が悪いものであって、歪みという言葉自体には悪意は無いのではないでしょうか。

歪み とは、本来ある形ではない状態になっていることや、曲がっている事を表現します。

それが、非物体的なものに対して使われる時は悪い意味でも使われます。

では、ここで言う認知の歪みとは具体的になにを指しているのでしょうか。

例えば白黒主義のようなクセは、確かに悪い部分もありますが、時にはプラスに働くこともあります。

白黒主義の人は判断が早く、行動に移すことが素早くできるという利点があるかもしれません。

と言う事は認知の歪みは全て悪いという訳ではなさそうです。

これが歪み=悪いを覆す考えです。

認知行動療法では、日常の様々な事例から、このような深い思考を行っていくことで認知の歪みを修正していきます。 

認知行動療法とは

現在で言う認知行動療法とは、アーロン・T・ベックのうつ病に対する認知療法が基となり、「認知の傾向・思考パターンの内容」によって「感情・気分・行動」が決定されるもので、その認知を掘り下げていく事によって問題の解決を促すというものです。
日本では、認知療法と同意で扱われる事が多く、今も様々な心理療法を取り入れながら進歩しています。
認知行動療法は様々な精神疾患に有効とされ、うつ病、パニック障害、摂食障害、不安障害など幅広く使用されています。
尚、医療機関以外にも民間団体や大学で研究・実施されています。

認知とは、簡単に言うと物事の捉え方です。
例えば、誰かと話しをしているときに自分の考えとは違う考えが出てきたときに、「そのような考え方もあるんだ」と共感するか、「その考えは間違っている」という否定をするかは人それぞれです。
そこにいたる最初の感じ方は認知というフィルターを介して感じているものです。
否定をするときには認知の歪みがあり、その歪みが結果的に会話を上手く行かなくさせる原因になる可能性を秘めています。
認知行動療法では、「その考えは間違っている」ではなく、「そのような考え方もあるんだ」という柔軟な認知ができるように、物事の捉え方やその原因を掘り下げて改善していきます。


■認知の歪みの例

○全か無か思考
物事を極端に白か黒かに分けて考えようとする。
例:一連の仕事で一つのミスがあると、その仕事自体が完全な失敗だと思う。


○一般化のしすぎ
一つの悪い出来事があると、それが何度も繰り返し起こるように感じてしまう。
例:仕事の企画をしたが却下されてしまい「次もどうせ却下されるんだ」と考える。


○心のフィルター
わずかに良くない出来事ばかりを考えてしまい、その他の良い出来事は無視してしまう。
例:会社である企画を提案し、多くの評価は大変良いのにある人から受けた些細な批評が頭から離れず悩む。


○マイナス化思考
良い出来事を無視、あるいは悪い出来事にすり替えてしまう。
例 :自分は能力がないと考えている人が、仕事がうまくいっても「これはまぐれだ」と考える(このような考え方をする人は、仕事がうまくいかないときは、「やっぱり、自分はダメなんだ」と考える)。


○結論の飛躍
1.心の読みすぎ、相手の感情を早合点し思い込んでしまう。ネガティブな先読みと決め付け。
例 :「この病気は決してなおらない」と考える。


○拡大解釈と過小評価
自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。
逆に他人の成功を過大評価し、他人の欠点は見逃す。
例 :些細なミスをおかして、「なんてことだ。これですべて台無しだ」と考える。


○感情的決め付け
『こう感じるんだから、それは本当のことだ』というように、自分の感情を、真実を証明する証拠のように考えてしまうこと。
例 :「不安を感じている。だから失敗するに違いない。」


○すべき思考
『すべき』『すべきでない』と考えてしまうこと。
例 :会社のルールがこうなのだからそうするべきだ。


○レッテル貼り
一つの事柄での判断を、他のときでもその判断しかしない
例 :片付けをできない私は他のことでも失敗する

○個人化
良くない出来事を、自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう。
例 :部下が成長しないのは、自分ができないからだ



■スキーマ
→個人がそれぞれ持っている基本的な人生観や価値観であり、普段は無意識的な自分のルールとして様々な判断に用いられる。
本人はスキーマに気付きにくく、自分の感情の苦しみや、日々の苦悩の原因がスキーマをかえる事によって改善するということにはほとんど行き着けません。
あまりにも日常的にスキーマを利用した判断をしてきているからです。
また、スキーマの変容を周囲が促してもなかなか変わる事もできません。
スキーマはその人が生きてきた中で大切なもので、変えるという事は自己の否定にもなるからです。

本人が自分のスキーマに気付き、それを変容させようと思うまでの道筋を認知行動療法は行います。





認知行動療法は、まず自分の悩みに対する具体的な事象を挙げ、それを深く掘り下げます。
カウンセラーはこの堀さげをしやすくするためのサポートをします。
例えば質問の方法を工夫することで自分で発見できるようなプロセスにしたり、違う見方が無いか一緒に考えるという作業になります。
カウンセラーから掘り下げる事は、クライエントのためにはならないからです。
なので、認知行動療法はクライエントの力も必要になります。
悩みを深く掘り下げていく時には精神的負担も発生するので、注意が必要です。

認知行動療法とは、クライエントが自分自身で問題を解決していけるトレーニングともいえます。




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プロフィール

佐屋鉄心

心理カウンセラーの佐屋鉄心です。
普段は某カウンセリングルームで認知行動療法の心理カウンセラーをしております。
様々な悩み解決のヒントとなれるような執筆活動をしています。