心を軽くする方法~認知行動療法のblog

心理学で心を軽くする方法。心理学で心をひも解き、相手も自分も理解しあう事が出来る。【心理研究家】佐屋鉄心

今日の一言
「自分へのダメ出しは程々に」

情動と感情

情動と感情は似ているようで違うものと扱われる事がほとんどです。
分野によって解釈や意味は違いますが、情動は「表層的な身体の変化を伴なうような強いもの」で、感情は「喜怒哀楽のような理性に対してのもの」というものが多い解釈です。
また、感情の一部が情動であるという考え方もあります。
簡単に言うと、情動は本能的に感じるもので無意識的、感情は思考を伴なって感じる意識的なものと私は考えています。
これらを踏まえて、普段起こっている快・不快に関して考えてみましょう。

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 例えば、「高いところに行くと足がすくむ」というのは情動が不快を感じることによって、身体的な反応を伴なっています。
その後、「高いところは怖いので早く降りたい」という感情が出ます。 
また、 「昨日、上司に怒られたので今日は仕事に行きたくないなぁ」と感じるのは、「また何か言われたら嫌だな」「上司に申し訳なくて顔を見たくないな」「怒られて恥ずかしい姿を晒したので行きずらい」などの認知と思考を解して感じている感情です。
ですが、「上司に怒られた時に赤面し怒りを感じた」というのは、情動がおこした事象です。

ここで、なにが言いたいのかというと、情動がおこしたものは変えにくいが、感情がおこした事象は認知の違いで変わるということです。
高いところに行って足がすくむのは、そう簡単には変えられません。
理性が届かない部分だからです。ですが、何度も高いところに行っているうちに足がすくまなくなる事はあります。脳が慣れるからです。
一方、感情の方はいったん認知と思考を挟んでいます。
上司に怒られた瞬間の怒りはすぐに変えられないかもしれませんが、次の日の仕事に行きたくない感情は変えられます。
上司や同僚はなにも気にしていないかもしれません。
自分の不安予測から想像した未来に感情が捉われているだけです。
違う見方をしてみると、いきたくないという感情はその場で変える事が出来ます。

皆さんは、自分の気持ちがどっちの原因で起こっているのかを考えてみてください。
意外と感情側のもので、認知を変える事によって改善できるかもしれません。 

合理的な考えをプラスする

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認知行動療法を自分でするときに気をつけたいことがあります。
認知行動療法では認知の歪みを修正する作業を行います。
他記事:認知の歪みとは 
その時に、自分の認知を感情が納得しないものに変えてしまうことがあります。
これでは、認知を変えてもまた違う問題が発生してしまいます。
例えば、多くの人の前で上手にしゃべることが出来ないという悩みがあるとしましょう。
失敗したらどうしようという自動思考から感情が不安になっている場合だとします。
ここで、自動思考を「嫌われても良い」と言う風に変えてしまうと、実は感情が納得できないまま我慢することになってしまいます。
スキーマが本当は嫌われたくないと思っているからです。
感情を頭ごなしに押さえつけているような状態です。
この場合は、「失敗するかもしれないが成功するかもしれない 」などの自動思考にするほうが感情は納得します。
極端に反対の自動思考にする事は自分が納得行かないものになります。
そこで、自動思考の変化には、合理的な考え方や捉え方をプラスすることが大切です。
感情を無視して元々持っているものを消してしまったり逆転してしまっていてはいつまでも苦しいばかりです。
元々持っているベースは変える事はないんです。
ベースに他のものをプラスするというスタンスが自分の感情もスキーマも傷つけない方法です。

認知行動療法が一人で行うのが難しいと感じている方はここに注意して実施してみると良いでしょう。 

ちょっとの優越感は心の栄養

ネガティブ思考で落ち込み気味な方は自分のことをどう思っているでしょう。
「自分はダメだ」
「人より出来ない」
などの、現実的な自己評価を行っています。
その評価が更に落ち込みを生むという悪循環になりがちです。
逆に、精神的に健康な人は、自分を平均以上であると思う傾向にあります。
「優越の錯覚」といって、心理学的に自分が優れていると考え優越感を感じるという現象で、健康な脳の状態だと少なからず起こるものです。
ですが、落ち込みが強い人は、このような人を見ると嫌悪を感じるかもしれません。
「自惚れ」のように感じてしまうからです。

このような研究発表があります。
山田 真希子氏(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究プログラム 脳病態チーム 主任研究員)の研究によると、
優越の錯覚が大きい場合と小さい場合を比べたときに小さい場合は抑うつ状態が強く出る」
という発表をしています。

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実験内容としては、

1、自分がどのくらい平均より優れているか劣っているかを答えてもらう 
2、 抑うつ状態の程度を調べる
→この2つの結果、「抑うつが弱い人ほど優越の錯覚が強い」結果となりました 
3、脳の線条体と呼ばれる部分のドーパミンD2受容体密度を計測
4、安静にしている時の脳活動データを計測し、線条体と機能的に結合を持つネットワークを探し出し、その上で、機能的結合の強さと線条体のドーパミンD2受容体密度との相関関係について解析
→ドーパミンD2受容体密度が低いと前部帯状回と線条体の機能的結合が弱いという結果がでた
5、前部帯状回と線条体の機能的結合の強さと、優越の錯覚の相関関係を解析
→機能的結合の強さが弱いと優越の錯覚が強いという結果がでた

というものです(割愛しながらの文章になります)。

要するに、
ドーパミンD2受容体密度が低い

前部帯状回と線条体の機能的結合が弱い

優越の錯覚が強い

抑うつが弱い
となります。

これは、優越の錯覚が心の健康に役立っているという理論で生物学的な脳内の仕組みを明らかにしたものです。

私の考えですが、脳の活動部分は個人で変える事は難しいですが、優越の錯覚の部分は考え方一つで変えられると思います。
自分が今思っている自己評価より、もっと出来ているのではないかと考える事はできるからです。
自惚れや過大評価を毛嫌いせず、自分もちょっと出来るんじゃないかと思ってみるのも良いことだと思います。

 

マイナスイメージとプラスイメージの両方を考える

ネガティブ思考の方は、悪い想像が頭から離れないという事はよくあることです。

何かのきっかけでマイナスのイメージをしたときに、それの心理的対処が出来ないでいると、いつまでも感情が捉われてしまうという現象です。

これは、自分に対して様々な制約となり、本来上手く行く事でも上手く行かなくなる事もあります。

更に、それを繰り返していると、成功体験が得られずまた失敗するイメージばかりになってしまい、負の連鎖が生まれます。

どんどんプラスイメージが出来なくなっていくのです。

では、マイナスのイメージに捉われている時はどうしたらよいでしょうか。

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まずは、客観的に自分の状況を整理しましょう。

これは、マイナスのイメージと今の自分を切り離す作業です。

ネガティブ思考の方は、未来のマイナスイメージを「今」のように感じている場合がほとんどです。

今感じているかのようになっているので、感情が強く出ます。その感情が更にマイナスイメージになっているのです。

ですから、まずは未来と今を整理するために今の状況を細かく把握する事が大切です。

次に今の状況を元にプラスのイメージをしてみます。

ここで大事なのが、プラスのイメージは必ずあると前提を自分に設けることです。

「絶対に上手く行くわけない!」とは考えないで下さい。

逆に「絶対に何か方法はある!」と考えてください。

この思考をするだけでも、マイナスに捉われていた感情が少し開放されます。

また、パターンを表にしてみると分かりやすいかもしれません。

喜び度イメージと成功可否
1位 マイナスイメージで成功
2位 プラスイメージで成功
3位 マイナスイメージで失敗
4位 プラスイメージで失敗

トータルするとマイナスイメージの方が順位が上です。

マイナスのイメージだけをして、その通りになった時は喪失感は少ないものです。

プラスのイメージをして失敗した場合は、喪失感が大きくなります。

実は自然と喪失感の少ないマイナスイメージを選択してしまう人もいます。

ですが、上記の場合どちらも失敗です。また、マイナスイメージで成功すれば良いですが、マイナスイメージをしているようでは成功への道は開けないでしょう。

大切なのは、プラスのイメージを実現させようとすることではないでしょうか。 

自己否定が強いのはなぜ?

自己否定

自分に対して、人にはしないような否定をする方がいらっしゃいます。

色々な方のお話しの中で、自己否定が強い方には2パターンあることに気が付きました。

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●パターン1→自分を認めることがだという考え方のクセを持っている

これは、日本人に多いことでもありますが、「控え目で、驕らない」とい美徳があり、自分を肯定することが悪い事だとどこかで身につけた場合です。

この考え方の反動で、上手く行かない場合は、自分を強く否定してしまいます。

●パターン2→回避の手段として自己否定をし、自分はだめだというレッテルを貼る

これは、現実的に自分ではどうにもならない時に、立ち向かうことが出来ず回避をしようとしたときに出る考え方です。

自分がダメだとレッテルを貼ることにより次の行動を制約します。

「ダメだから努力しない」「やっても無駄だからしない」などの言動となり、何もしなくてもいい自分を創ってしまいます。

結果、現実から逃げる形となります。

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どちらも、自己否定が強く出て、自分を追い詰めたり傷つけたりして、感情がつらくなるという部分は同じです。

そして、どちらにもいえるのが、現実的(客観的)な自分から目を背けているともいえます。

出来れば自己否定をせず、感情的な幸せの中で暮らしたいものです。


では、強い自己否定をしないようにするにはどうしたらよいでしょうか。

そもそも、人間は他人より優れていたいと無意識的に考えています。

ですが、よくないケースだと自分が劣っている事を認めるために合理的に自分はダメだという考えに行き着きます。

そして、他人より優れていたいという無意識がはたらき、自分の中で矛盾が生じてマイナスの感情になってしまいます。

ですが本来、他人より優れていなければならないという事はありません。

人より優れていなくても、それは個性です。

適度な劣等感は必要です。人の向上心とは正負に関係なく感情から生まれます。劣等感は向上心につながるからです。

ですが、劣等感を自己否定に変える事はよくありません。

×劣等感 → 自己否定

ではなく、

○劣等感 → 向上心


に変えることが出来れば、強い自己否定はする必要がありません。

劣等感を向上心に変えるコツとしては、劣等感が出てきたら即座に対処する方法を考えることです。

自分で思いつかない場合は、人に意見を求める事も良いでしょう。

いち早く、劣等感に感じた出来事への現実的な対処をすることが強い自己否定のパターンを回避する方法です。

そして、なにより大切なのは在りのままの自分をちゃんと受け入れるということではないでしょうか。

自分を知っていれば強い自己否定や過度な自己肯定は出ないものです。




強い自己否定をしてしまうという方は、劣等感に気をつけて自分と向き合ってみてはいかがでしょか。 
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プロフィール

佐屋鉄心

心理カウンセラーの佐屋鉄心です。
普段は某カウンセリングルームで認知行動療法の心理カウンセラーをしております。
様々な悩み解決のヒントとなれるような執筆活動をしています。